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はてな社長 近藤淳也氏インタビュー
はてなと言えば、自由で柔軟なイメージが強いが、近藤社長は「一旦他人のやり方を受け入れてから客観的に議論できる」人材を求めているという。自由を大切にする一方、自分を厳しく突き詰めて、人とのコミュニケーションを重視する姿勢が見えてくる。(聞き手は弊社社長 田中良和)
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「成功と失敗」を許容できる強さ

田中:
近藤さんは大学院生の1年間、自転車レースにチャレンジしていますよね。ほとんどの人は「やりたいと思いながらもできない」、または「どこでやめたらいいのかわからないので、手を出すのに躊躇する」という考えを持っているのではないでしょうか。近藤さん的な生き方のユニークなところは、始めると同時にやめることも考えているところではないかな。
近藤:
終わりのイメージは、始めるときに持ってますね。仮にうまくいったら、こちらに進んでみようというのもあるし。
田中:
初めから最終的な像をいくつか描けたらやってみようという感じでしょうか。
近藤:
それはそうでしょう。うまくいった場合とそうでない場合をイメージして、どちらに進んでもいいやと踏ん切れたら前に進めるんじゃないですか。
田中:
そうか、どちらにもOKを出せなければ手を出せないと。会社なんて失敗しても成功しても、個人として得るものは必ずありますからね。じゃあ、やってみた方がいい。
近藤:

はてな社長 近藤淳也氏インタビューそうですね。はてなの場合は「初期投資の300万円を使い切ったら終了と決めていた」という話をしましたが、この金額は大学の授業料と対して変わらないんですよね。だから、大学で得たもの以上のものを得られればいいなという気持ちでした。そして、絶対に得られる自信があった。

以前、CNETのブログに「高校生の授業の一環で、高校生にカードゲームの『大富豪』という課題を与えた」というエントリをしたんです。大富豪が終わった後で、自分が大富豪、富豪、平民、貧民、大貧民のどの位置にいるときが一番楽しかったかを書いてもらい、起業家診断のようなものをやりました。

そのとき僕が言ったのは、「起業家に一番向いているのは、大富豪と大貧民、両方が楽しめる人」。要はハイリスクハイリターンが楽しめる人なんですね。この大富豪というゲームは面白くて、「大富豪」の役を掴んでしまうと、次は都落ちするしかない。だから、一番いいポジションは「富豪」なんですね。だから、大富豪一歩手前でわざと負け、いつも二番手でいるのが一番安定しているプレイの仕方です。そういう選択肢がありながらも、勝負に出る人、負ける人というのが必ず存在する。

ずっと勝ち続けることはもちろん、負けた状態の自分をも好きでいられる精神的な強さが大切だと思うんですよ。それが、「成功/失敗した場合」のイメージを持つこととつながるのかなと。

田中:
負けてもいいと思える精神力の強さ──そういう自分をも許せる、つまり「自分をさらけ出せる人」というだと思います。多くの人は、「大きい会社でいい給料をもらっている」というような、外側から見たわかりやすい価値観に左右されていると思う。意外と自分はそうじゃないと思っていても、そういう常識にとらわれていると思う。そういうものがなくなった裸の自分でも認められる心を持つことで、結果は力が抜けてきて出るものだと思う。自然体の強さというような。
近藤:
仮に「常識の床」というものがあったとしましょう。そこには「月収25万」といったことが書いてあるとします。誰もがその床に乗っていなければならない……というような、強迫観念みたいなものを持っているのでは。だけど、床そのものから降りてしまったとしたら? 下にも下がれるし、もちろん上も目指せます。どこかへ自由に飛んでいくこともできますよね。
田中:
結局、失敗や成功という言葉や常識にどこか囚われているのだと思うんです。つい良いキャリアや人生を得られるための「正解」を探してしまう。一番の近道を選んでないとダメな自分なんじゃないかと思ってしまう。けど、そんなものあるんでしょうか。どこの誰が正解を選んだ人なんでしょうか?「人生に正解はない、だから間違いもないし、成功も失敗もない」ということだと思うんですよね。そう思えないと、人生は効率が良いか悪いかばかりに気になってしまうと思うんですよね。 かっこ悪かったり、間違っていたりするけど、うまくいくときもあるし、ラッキーなときもある、そういうのをひっくるめて楽しめることが重要だと思います。

変わらない。変えようとしないのは自分のせい

田中:
例えば学生時代の友達と話しているときに、何か感じることってありますか?
近藤:
そうですね……。例えば、仕事がすごく楽しそうで充実していそうだなとか、彼のような立場なら置き換わってもいいと思える人は、さほどいない気がする。
田中:

あくまでも個人の趣味趣向なので、全員がなりたいモデルは存在しないというのが前提ですが……。例えば、23歳頃の社会人1年生はみんな夢を持ってるじゃないですか。あの入社したての頃は楽しそうに話をしていたけれど、数年経つとそれを失ってしまっている人が少なくないように思えます。

僕は楽天に23歳で入社したのですが、その頃の友達に今会うと、輝きを未だ持ち続ける人もいれば、違う方向に行っちゃったなぁという人もいる。そういう中で、青臭いかもしれないけど、自分はあの初めに仕事というものに対して抱いた可能性や情熱をもち続ける人間でありたいと強く思ってきました。仕事って、人生の中でこの辺だよなって、妥協して折り合いをつけたようにはなりたくなかった。だから、周りを見ていて、どうすれば入社したての頃の輝きを持ち続けていられるのだろう?ということを良く考えていたのですが、近藤さんはどう思いますか?

近藤:
働く方向性として、僕は3パターンがある気がします。一番は、バリバリ頑張ってキャリアを向上させる、二番目は、仕事はそれなりで趣味に走る、三番目は、会社を辞めたりしてモラトリアム中の人。
田中:
二番目の「趣味に力を入れる人」は、往々にして仕事に力を入れていないわけですよね。でも辞めるわけでなく仕事と折り合いを付けてやっていく。
近藤:
いや、二番は、「仕事は面白くなくてもいい」ということを認めてしまったという人、割り切り型だと思う。もちろん、そのことを僕は尊重していますよ。世の中面白い仕事ばかりではありませんから。だけど、僕には妥協に見える。だから、一番か三番が好きですね。会社をやめてニートに近い人は、まだやりたい仕事を求めているというか、仕事を信じている感じがするので。
はてな社長 近藤淳也氏インタビュー
田中:
ニートの中にも、何かに向かって鬱屈した気持ちを抱える人と、本当に何もかも放棄した人の二種類がいそうな気がしますけどね。やりたいことは、かなり真剣につかみにいかないとつかめないけど、つかむ前にあきらめる人も多い。つかめるかつかめないかわからないから、自分に言い訳してあきらめてしまうのだと思うのですが、そういうのは良くないと思います。近藤さんは、自分の周りの人には一番であってほしいと思ってるんでしょうか。
近藤:
人によりますね。カードゲームをしたときに言ったのは、「平民が好きな人、つまり真ん中がいいと思ってる人はそれでいい。勝負に出たいと思うかどうかは趣味の問題だと思う。ただ、我慢してるのはよくない」ということ。皆と同じ道を歩むよりもはみ出たいと思ってる人は沢山いるでしょうが、躊躇しているうちに人生が残り少なくなってた、ということもありますからね。
田中:
じゃ、近藤さんは自分の会社の人や周りの人にも、「(どんどんやめたほうがいいので)勝負に出たいならば出た方がいい」とアドバイスするのですか?(笑)
近藤:

いや、それはさすがに責任が取れないので(笑)、抽象的な話に留めています。それに、本人が納得して決めなければ進まないじゃないですか。

たまに友人から「会社、おもしろくないんだ」という相談を受けるんですよね。すると僕は、「じゃあやめたらええやん」と即返事をする。そのアッサリ具合にビックリする人が多いみたいです。「よくよく考えると、会社を辞めない理由は何も思い当たらなかったので、辞めてスッキリしました」と感謝されたりとか。僕、ウズウズ言っているのが苦手なんです。

田中:
間違いなく自由意志で仕事するわけですからね。別に強制労働じゃないんです。生きていくためだけなら、仕事はいろいろあるでしょう。だから、今の仕事は、本来、自分がやりたくて仕事しているはずなんです。そういう考えで取り組まないと、自分への言い訳に終始してしまうと思います。やりたくないんだけどというと、だったら辞めるか、逆にスパッと割り切るかどっちですよね。中途半端なのがよくない。
近藤:
何かが与えられていて、やらされているように感じているとしたら、それは間違いでしょう。特にIT業界は、意のままにやることなんて何でも──とりあえず、始めることはできるという世界ですよね。その自由は行使しないと。
田中:
こういうことって、同世代の人たちに対する普遍的な話題だと思います。ただ、どうアクションを起こせばいいのかがわからなかったり、自分にはできないと考えて可能性をつぶしてしまったり。そういう人たちに対して、どうアプローチしていけばいいでしょうね。
近藤:

自分で会社を興す人が増えたら面白いだろうと、漠然と思いますね。そこまでは勇気がない、やれないと考える人がいるのも知っているので、そういう人は田中さんが陣頭指揮をとっている会社で働くとか、共感できる人を見つけて一緒にやるのもいいでしょう。

とにかく「アクションを起こさなければ変わらない」のと、「変えようとしないのは自分のせい」というのは、基本原理として心得ておくべきだと思います。

田中:
よく自分の会社で、この会社はこういうところが良くないとか、こうふうにしてほしいという意見を聞くと、じゃ、そのために、今日から何ができるの?と聞き返すことにしています。万能な完全な会社などありません。状況も変わるし常に最善を目指して努力しなきゃいけない。その中で重要なのは、結局、自分で思った課題や問題意識を、自分で解決してくものと思うか、他の人がそのうち変えてくれるものだと思うのか、その違いじゃないでしょうか?選挙に投票しない人が、結果についてあれこれ言ってもしょうがないように、自分で変えようとしない人は、不満を言う資格もないんじゃないかと思います。
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