GREEキャリア > はてな社長 近藤淳也氏インタビュー(後編)
「向いていない」は言い訳か?
- 田中:
- 近藤さんは、「こういう30歳だったらなってもいい」というモデルはありますか。
- 近藤:
- もう一度30歳をやれるなら、建築家や写真家になりたいですね。
- 田中:
- どちらにしてもプロフェッショナル系ですね。仕事の話をするときは、大抵の場合、「営業」とか「ウォークマンの営業企画」といった、組織の中における役割の希望と言った議論になるケースが多いと思うのですが。そういう働き方を望んでないのかな?
- 近藤:
- まずは、「交換不可能」でありたいと思いまして。「近藤淳也」という人間の一生で、世の中に何をどれくらい残すかが人生の勝負だと考えています。僕じゃなくてもできることをやってしまうと、一生を終えるとき「本当に生きててよかったのかな」と思ってしまいそうで。
- 田中:
わかる気がしますね。価値って何かと考えると「希少性」だと思うんです。空気のほうが人間には必須だけど、数少ないダイヤモンドの方が価値がある。必要とされる人間になるということは希少な人、つまり、あの人じゃなきゃダメなんだよ、という人にいかになるか、ということだと思います。
子供の頃、夏休みなどは家でよく、一日中ゲームに熱中してたんです。明け方までゲームしてて、何度か、明け方にポストに新聞が届く音がしたこともあった……。そのとき、「毎日ゲームしていく間に世の中進んでいくんだなぁ」とふと思いましたました。自分がゲームをして何もしてないのに、勝手に何か世の中では起きて、それで新聞ができてるんです。当たり前なんですが、そのとき初めて自分ひとり生きてようが死んでようが、関係なく世のなか進んでいるということを気づきました。けどきっと、世の中には、昨日一日のやったことが世の中に影響を与えて、次の日の新聞にそれが載っている人もいるはずなんです。小学生ながら、その違いについて考えたのを覚えています。
- 近藤:
- 世界って、自分が生まれる前も、自分無しで回っていましたよね。従って「自分は必要とされていない」というのが自明の理です、特に社会にとっては。「仕事」とは、「社会にとって自分が必要とされるために、無理矢理潜り込む作業」だと思うんです。初期状態が「必要とされていない」ので、努力をしないと社会に居場所を確保できない──というのが僕の仕事観です。
- 田中:
- 自分のしたいことから仕事を考え出すことは重要ですが、同時に自分がその仕事をするのが最適だという能力や説明がなければそんな仕事できない、と思いますね。例えば、ipodやプレイステーションの商品企画をしたいと思っても、多くの人がその仕事がしたいと思っているでしょう。その中では、自分がその能力を証明しなければ、そんな仕事できるはずがない。だから、やりたい仕事があったら、まずはその仕事につける能力をつけるための仕事をするべきなんです。単にやりたいけどできない、だからやらないでは、何も始まらないし、それはわがままです。もちろん、やりたいから勝手にやるというのもありますけどね(笑)。
- 近藤:
時間も大事だと思います。僕は、その人が何かを始めてから1年半経ってないと、その人の言うことは信じないことにしているんです。例えば、「俺には才能がない」とかね。そう言われたら、「それは言い訳だ」とハッキリ言ってしまいます。これまでやっていなかったことに切り込むって、そんなに甘くないでしょう。もちろん先天的な能力もありますが、1年半くらいやらなければ「始まりもしない」と。本当にやりたいことであれば、1年半は乗り越えるのに必要な期間だと思いますよ。
実際、僕はカメラマンとして1年半活動しましたし、それから今後の展開を考えようという考えがありました。あまり「向いてない」ことを言い訳にするのはよくないと思う一方で、本当に向いていないことはアッサリ止めた方がいいという考えもありますけどね。
- 田中:
- でも、その見極めが難しいのでは?(笑)
- 近藤:
- でも、よくよく考えるとわかるでしょう。例えば上司が気持ち悪いとか、腹が立つからイヤだと思うのであれば間違ってる。だから感情的になっていたら頭を冷やして、辞めたい理由が自分か、周りかを考えることは大切だと思います。
- 田中:
- 自分の能力が理由と言うよりはチームワークそのものに対する疑問が沸くこともありますしね。
- 近藤:
- 新しい世界に入ろうとするときって、滅私状態にならないといけないと思うんです。個性を出していくのはその後だという気もする。
- 田中:
- まずは、その場所にあるものを自分に詰めていくと。自分のカラーはそのうちに着いてくる。初めから受け入れないのはもったいない、ということですね。
コミュニケーションの上で初めてできる「やりたいこと」
- 田中:
- 会社に求めている人材は、どんなタイプでしょう。
- 近藤:
- はてなのやり方を、「自分のやり方と違う」と頭ごなしに拒否するよりは、一旦受け入れてから客観的な議論に持っていける人がいいですね。先ほどの「滅私状態」じゃないけれど、自分というものを一切無くしても、どこかに自分が残る──という自信を持っている人でないと、人の意見を本気できちんと聞ける状態でないと思います。
- 田中:
- 自由にやるとしても、場合によっては近藤さんのこうやるべきという考え方もあるでしょう。例えば社員に何かを提案されそれが自分の考えと違う場合、「とりあえず自由にやらせる」「自分の意見を話し従わせる」といった、いくつかの選択肢があると思うのですが。
- 近藤:
- そこは、「なぜ?」と繰り返し聞いて提案の理由を追求し、合理的な答えがでてこなかったら否認することもあります。合理的な説明ができたり、その人がみんなに伝えてコンセンサスが得られ、合理的な議論ができれば大丈夫。
- 田中:
- よく周りの理解がないから自分の正しさが伝わらないんだ、という話がありますが、そういうコミュニケーションを含めみんなを説得する、ということまでできて初めてやりたいことができるというものだ―─と、思います。提案とは、コミュニケーションをとることまでが含まれているのだということを認識してほしいですね。
- 近藤:
- 特に最初はそうですね。その人の哲学や価値観を理解しないと、唐突な提案にはついていけないでしょう。慣れてくると「あの人こういうこと考えてる人だから、今回こういう風に言ってるんだな」と理解できるので、ある程度の権限を自分の裁量で与えることもあります。僕が「なぜ?」と何でも聞くのは、行動原理を周りの人にも分からせて欲しいという気持ちがあってのことです。
- 田中:
合理的に話すというのは、ロジックを立てて難しそうに話すということではなく、結果として誰もが納得することを話すということだと思います。これは、思考の再現性というもので、きっとまた、同じ課題があったときは、同じ結論がでるという、選択肢の選び方の説明です。こういう合理的な伝え方・考え方という共通言語を使ったコミュニケーション能力がないと、周りを納得させて集団でモノを作る作業は難しい。
けど、つい忘れがちなのは、合理的なことよりも感情的であることだとも、思っています。どんなに正しくても、嫌な言われ方をされるとそれだけで相手は受け入れてくれなくなる。それを非合理的だ、というのは簡単ですが、相手は人間なんです。正しければ何でも言うことを聞いてくれるコンピューターじゃないんですよ。
- 近藤:
はてなでは、会議をすべて録音してレビューしていますよ。「あの発言はこういう言い方の方がいいんじゃないか」とか。会議後は「今日はこの人がいい指摘をした」「いい方が感情的だった」と、名指しで結果を投票する。それを繰り返すうちに議論がうまくなるんです。
ユーザーのためにサービスを提供していますから、最終的にはユーザーを巻き込むことが必須でしょう。社内の人も巻き込めなくてユーザーを巻き込めるわけがない。
最近は、「意思表示をしよう」ということに力を入れています。ミーティング後に「あの議題はさー」と陰口を言うのであれば、ミーティング中、本音で話し合おうと。はてなの社員15人全員で、すべてが本音トークは時間的な限界もあり、難しいですけどね。それをどうクリアするかが、目下の課題です。
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