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株式会社ホリプロ 代表取締役社長 堀 義貴氏 インタビュー
社長に抜擢された堀社長は、音楽部門などで社内に人材が不足している現場には、今でも参加しているという。インタビュー後編では現場経験者ならではのエンターテインメントや会社に対する具体的で確固としたビジョンを伺うことができた。(聞き手はグリー社長 田中良和)
株式会社ホリプロ 代表取締役社長 堀 義貴氏 インタビュー
堀 義貴(ほり よしたか)氏 プロフィール

1966年東京都生まれ。成蹊大学法学部卒業後、89年ニッポン放送入社。93年ホリプロ入社後、取締役制作・宣伝事業担当などを経て現職。ホリプロ創業者・堀威夫氏(現・取締役)の次男。著書に『これだけ差がつく!「感じる人」「感じない人」―ホリプロ社長が教えるチャーミングな組織のつくり方 』がある。

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まったく予想外だった社長抜擢

株式会社ホリプロ 代表取締役社長 堀 義貴氏 インタビュー
田中:

社長に抜擢されてから何年ですか?

堀:

まる4年経って、今5年目です。

田中:

この4年間はいかがでしたか? 社長になってすぐに会社の雰囲気をガラッと変えたり、会社をそのまま継続して何も変えないとか、前任者からの引き継ぎ方はいろいろあると思いますが……。

堀:

社長を引き受けた時に「1年間は何もやらずに様子を見させてくれ」と言ってあったので、最初の1年は何もやらなかったです。まずは1サイクル経験してみて、2年目から徐々に変え始めました。

田中:

何から着手したんですか?

堀:

人事をドラスティックに変えました。それと今までのホリプロは残しつつ、ホリプロと正反対の事務所も作ろうとしました。たとえばモデル事務所に資本参加して系列に入れてしまうといったようなことですが、以前は「そういうことは行儀が悪い」というのが、ホリプロの中に何となくあったんです。

田中:

堀さんの場合は社長になる前からホリプロで現場の人間として働いていましたから、「自分が社長になったらこうしたいな」と思っていたこともあったのではないですか? 特に1年も我慢して様子見をしていたら、あれもこれもしたくなるように思えるのですが。

株式会社ホリプロ 代表取締役社長 堀 義貴氏 インタビュー
堀:

もともと「社長になりたい」と思っていませんでしたから、社長になったのは「青天の霹靂」だったんですよ。だから「社長になったらこれをやるぞ」というのは一切なかったんです。以前のホリプロを否定するつもりはなかったので、それを継承て、さらに変えたものを足すことにしました。「変えざるをえないものを変えないのはもう悪だ」と思っていましたから。

ただ、僕が「変えろ、変えろ」と言ったら駄目になるんですよ。「こういうことだよね」と話してそれぞれの社員が自分たちで変えていくように仕向けないといけないんです。10年くらいはかかると思いますが、「堀」という名前の社長は僕で最後になるかもしれませんので、社員たちに自分たちの会社として変えていってほしいんです。

すべての現場を直接指揮しているわけではないので、「全ジャンル、全年代のナンバーワンを目指す」といった、わかりやすいメッセージだけを社員には伝えて、あとは社員に任せています。今までのホリプロは「1番を目指しましょう」と言ったことがなかったので。

田中:

「10番目でも幸せだったら別に良いじゃないか」というように「1番になりたい」と思う人は、実際には世の中には少ないと思うんですよ。あえて「1番」を掲げるのが堀さんらしいところじゃないかなと思います。

堀:

僕には自分なりの「格好良さの美学」があるんですよ。場末のラーメン屋のカウンターに座って餃子をつまみながらビールを飲んでナイターを見ながら「さあ、仕事に行くか」というのが僕は格好良いと思うんです。一番になったときに「そんな大したことないですよ」と一番気取りしないのが格好良い。

田中:

そんな独自の美学をお持ちの堀さんにとって同世代で輝いている人というのはどんな人ですか? よく一緒に遊んでいる友だちでも構わないのですが教えて頂けますか。

株式会社ホリプロ 代表取締役社長 堀 義貴氏 インタビュー
堀:

僕自身はあんまり遊びに行かないんですけど……。でも「この人は面白いな」と思ったのは、大塚製薬株式会社でポカリスエットのプロダクトマーケティングマネージャーをしている大塚太郎さん。彼は本当に面白いです。創業者一族なのでお坊ちゃんっぽいかと思ったら、たしかに気品はあるんですけど、思いついたらすぐにやってしまう行動力があるんですよね。

去年はキリマンジャロに登ったそうで、僕が「すごいですね、僕は山は駄目だから何か面白そうな所に行くときには誘ってくださいね」と言ったら、無重力体験のお誘いのメールが来ました(笑)。ロシアかアメリカで「飛行機を急降下させて無重力体験ができるので行きませんか」と。「この人やっぱりすごいな」と思いましたね(笑)

田中:

それはたしかにすごいですね(笑)。同年代の経営者では誰かいますか?具体的でなくても、人物像でも構わないのですが。

堀:

お互いにくだらない話ができて、所々「ちょっとそれはいただき」と真剣に考える余地がある会話ができる人だと面白いですね。そういう人とはまた会いたくなります。

その点では宇野(康秀 株式会社USEN代表取締役社長)さんは面白いですね。先日食事をしましたが、初対面で「うちにコンテンツ作らせてくださいよ。Gyaoを応援しますよ」と軽く言ったら本当にすぐ番組を製作させてくれましたからね(笑)

感受性があって好きじゃないと勤まらない

株式会社ホリプロ 代表取締役社長 堀 義貴氏 インタビュー
田中:

ホリプロで社員を採用する基準というのはあるんですか?

堀:

最低でも「よくしゃべる人」で「顔が良い人」

田中:

それはどうしてなんですか?

堀:

楽しそうだから。エンターテインメントなんだから楽しそうじゃない人と話しても仕方ないじゃないですか。「私はこんなに面白いことをやってきたんですよ」と言えなければタレントの売り込みなんかできないですよ。だからちゃんと笑って、ちゃんと泣ける人じゃないと無理です。「自分が何に感動したのかを自分で分かっている」というのは最低基準です。

田中:

感受性の高さに加えて、なぜそうなのかを理解できる能力がないと駄目なんですね。

堀:

自分が泣いたら「なぜ泣いたか」を説明したくなるじゃないですか。それがエンターテインメントなんですよ。しかもビジネスとしてやっているわけだから「泣けるよ」ということをいかに効率的にたくさんの人に伝えるかが重要です。自分が笑えないのに「笑えますよ」とは言えないですよ。

田中:

たしかに「自分が笑えて、なおかつそれを説明できるか」というのはエンターテインメント・ビジネスの基本ですね。

堀:

「お笑いが好きだ」という人は山ほど来るんですけど、振り子と一緒で、笑えるなら同じくらいの振幅で泣けないと駄目なんです。お笑いの人が悲しいドラマの主役をやったら2倍泣けるんですよ。そういうことがちゃんと感覚でわかってないと仕事にならないんです。理屈じゃないから。

田中:

たしかにそういった感覚は教えにくいものですよね。

堀:

教えられないです。新入社員には入社式でも言いますけど、センスだけは教えられないんです。たくさんやっているうちにセンスアップしてくることもありますが、まずセンスがないと才能は伸びないです。それはタレントも同じですよ。だからマネージャーでもタレントでもそこの部分は常に研ぎすましていなければいけないですね。

ただ、変な人に教わったセンスは駄目になります。日本で勉強すると世界的なピアニストやバイオリストが育たないというのは変な教え方をされるからです。生徒の自由にやらせないし。でも若いうちから海外に出てしまえば最高の教師がどんどんついてしまうので、それはバイオリンも面白くなりますよ。

田中:

ほかに採用で気をつけていることはありますか?

堀:

うちは毎年採用の仕方を変えていて、マニュアルどおりに来た人は全部落とすようにしています。だいたいその年の流行っていうのがあるんですよ。たとえば猿岩石がブームになった時は「青春18キップで貧乏旅行しました」、阪神大震災の時は「ボランティア活動をずっとやってました」とか言う人がわんさか来ます。でも、それだとつまらないんですよ。

うちの会社は、本屋に並んでいる就活マニュアル本を全部買ってきて面接担当者に読ませてますから、そういうマニュアルに書いてあるような型通りのことしか言わない人はすぐに見抜けますね。

田中:

なるほど、そういう人は多そうですね(笑)

株式会社ホリプロ 代表取締役社長 堀 義貴氏 インタビュー
堀:

それにほかの会社と天秤にかけているような人はいらないです。来たい人だけ来させれば良いんです。今年は合宿面接です(笑)。学生が「ほかの会社の面接と重なるんですけど」と言ったら「来ても来なくてもどうぞご自由に」と。

田中:

どういう理由でそうしているんですか。

堀:

芸能プロダクションって好きじゃないと勤まらないからですよ。仕事はきついし。

いろいろな会社を受けて迷ってホリプロに来たという人は、絶対に長続きはしないです。みんな一人前の知識を持っていると思っているから、プライドは傷つけられるし、自信は揺らぐし。もともとそんなものあったって仕方ないんですけどね(笑)。

それにちゃんと休みが欲しい人には無理。休みを惜しんで現場に行くとか、休んでいる方が心配でドキドキするような人じゃないとできないですよ。

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